インフルエンザになったらタミフルを飲む?症状が出てから飲んでもあまり意味がない3つの理由

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今年もインフルエンザが流行するのでしょうね。
さて、今日はインフルエンザの治療薬の話です。

[インフルエンザはどんな病気?]

インフルエンザは多くの普段健康な人であれば
1-2週間で自然に治り、
特別な治療は必要としない病気
です。

インフルエンザがひどくなるのは
免疫能の弱い乳幼児やかなり年配の人や、
元々病気がある人の場合が多いのです。

[インフルエンザの治療薬としての効果]

さて、今世紀になって、
日本ではタミフルリレンザ、イナビル、ゾフルーザなど
「インフルエンザウイルスをやっつける薬」が登場し、
インフルエンザの特効薬としてたくさん使われるようになりました。

また、こうした薬には予防薬としての効果もあるとされており、
周りにインフルエンザの人がいるからと使う方もおられますね。

さて、実際のところ、
これらの薬の効果はどうなのでしょうか?

2014年には製薬会社などから独立した機関の
様々な調査の報告が出ています。

それによると、タミフルの場合、
成人では7日から6.3日間と16.8時間早く症状が改善。
喘息のある子供では改善効果が無く、
健康な子供では平均29時間早く症状が改善しています。

リレンザの場合、
大人では6.6日から6日へと、0.6日間早く症状が改善。
ただし子供では効果ははっきりしませんでした。

大人でも子供でもタミフルの投与で
入院が減ることはありませんでした
(Neuraminidase inhibitors for preventing and treating influenza in healthy adults and children. Cochrane Database Syst Rev. 2012; 1:Jefferson T, et al 他)

タミフル効果

ゾフルーザの場合、平均、
偽薬では発熱が3.34日間
変異していないウイルスの場合はゾフルーザを使うと発熱は2.06日
変異したウイルスの場合はゾフルーザを使うと発熱は2.62日
(小児ではウイルス変異は23.4%程度)
との報告があります。
ゾフルーザを使うと1.28日~0.72日ほど、発熱期間が短縮するのですね。
また、インフルエンザ脳症自体への治療効果や予防効果は証明されていません。

ただ、2009年の「新型」インフルエンザ流行時には
世界で日本がもっとも致死率・妊婦重症化率が低かった理由
個人の衛生レベルが高い(これは海外生活をすると実感)、
医療機関への受診が容易(これもアメリカにいると実感)
医療費が安い(これもアメリカにいると実感)
多くの人がまじめに取り組んだ(これも海外にいると実感)
などの要素もあるものの、
日本人の感染者の多くが抗ウイルス剤を使用したから
重症化が防げた
、という意見もあります。
(正式な文献が見つからなかったのでご存じの方教えて下さい)

余談ですが、
「マスク」をすることがとても一般的であるのも
体内に入るウイルス量を減らしたり(完全防御はできるわけがない)、
呼気を暖かい湿った空気にして
(ウイルスは冷たい空気が好きで、のどの免疫力は暖かい方が強い)、
感染を防ぐ効果はあると思います。

日本にいたときには1年中マスクをしていたのに
海外では強盗か変質者の扱いを受けてしまうため
なかなかマスクができず悲しい私です。

[予防薬としての効果]

周囲にインフルエンザの人がいる場合の
発症予防投与は 効果が認められました

[薬の副作用]

一般的には副作用と呼ばれる副反応についてはどうでしょうか。

頻度としては吐き気や嘔吐、頭痛などが多く、
腎障害、異常行動、ショック、肺炎、
劇症肝炎、出血性大腸炎などの重篤な副反応も見られています。

ちなみに、変なことを言う、とか
窓から飛び降りようとするなどの異常行動は
ウイルスとヒトの脳神経が
ノイラミニダーゼという同じ酵素を持っていて、
薬がそれを妨害するために起きる現象とも考えられています。
子供は脳血液関門という脳のバリアが未熟なので
薬の影響を受けやすい可能性があります。

ただし、インフルエンザ自体でも脳症(これも小児に多い)があり、
抗インフルエンザ薬を投与してもしなくても
異常行動の頻度が対して変わらないと、
国立感染症研究所の岡部先生は報告しています。

[国内でのインフルエンザ死亡数の推移]

ちなみに、国内でのインフルエンザの死亡数は
日本で抗ウイルス薬が使われ出した
2002年前後10年を比較すると
減っているとは言えないと思います。

インフルエンザ死亡者数

資料:社会実情データ図録

[結局・・・]

結局、
治療効果としては
大人でも子供でも1日早く症状が軽くなる
重篤化や合併症を防ぐかもしれないし、防がないかもしれない。(両方の意見がある)
発症予防効果はある。
副作用もあり得る。
(おまけ:死亡者数はたいして変わっていない気がする)

といわけで、個人的見解ですが、
発症してしまった場合、(ただし、症状が出てから48時間以内に投与)
「平均」1日の差の意義が大きいときは意味がある
重症化しそうな人(高齢者など)の場合、
 重症化を予防するかもしれないし、しないかもしれない。
予防投与は効果がある(ただし、同じシーズンに何度も必要になるかもしれない)
・使っても子供の脳症には効果がないし、脳症を予防もしない

といったところでしょうか。

今の私自身にはあんまりいらないけど。
もっっと、歳を取ったら使ってもいいかな。

ちなみにインフルエンザの患者さんを診ていた頃の私は
インフルエンザらしき病気になったことはありましたが
飲んだことはありません。

飲むも飲まぬも皆さんの選択です。
現状をよく知ってから決断して下さいね。

私自身は、比較的健常な人ならビタミンC療法の方が
良いと思います。

参考文献:Neuraminidase inhibitors for preventing and treating influenza in healthy adults and children. Cochrane Database Syst Rev. 2012; 1:Jefferson T, et al 他

関連記事

1.ワクチンは感染に効くのか?症状を抑えるのか?

2.インフルエンザワクチンに潜む問題点

3.風邪を引いた時のビタミンCの使い方

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コメント

  1. 俊行 より:

    医師です。
    ノイラミニダーゼ阻害薬についてですが、
    コクランの文献は読んでいませんが、
    日本でのreal worldとはちょっと違う印象があります。

    多くの患者さんが医療機関に発症後2日以内に受診して
    迅速flu検査を受けて投薬(私はイナビルと麻黄湯を処方しますが)される日本では
    もう少し効果が強い気がします。

    新型インフルエンザが流行した時
    日本での死亡率が他国に比しかなり低かったのも
    人種の違いだけではない気がしますが・・・。
    誰がインフルエンザ肺炎を起こすかなんて
    予め分かりません。
    感染者が多ければ多いほど、
    罹病日数が長ければ長いほど
    一定の割合で重症者が出現する気がします。

    あとは社会的損失コストも・・・。
    仕事を持った成人の欠勤やお子さんの欠席が及ぼすコストは
    医療費よりも高そうですが?

    まぁこれはあくまで私の個人的な感想で、
    証拠も根拠も何もないのですが。

    1. 松本 明子 より:

      俊行先生、
      コメントありがとうございます。

      私がインフルエンザを診ていた頃、
      薬を出しても出さなくても同じ患者さんが
      もう外来に来られることはほとんど無かったので、
      自分の肌で「よく効く」とか、
      「全く効かん」と感じたことはありませんでした。

      欠勤などのことも含め、
      先生によっては、あるいは患者さんによっては
      「平均1日の違いは大きい!」という考え方もあります。

      データは所詮「平均」だから
      現実にはもっと早く効く人も
      全然効かない人もふくまれるわけですし。

      「平均1日」のために、薬を使いたいかどうかは
      個人の選択でもあります。

      今のところは耐性株はあってもそれほど問題なさそうですが、
      長期的な視点での強毒性の耐性株が出現しないのか?
      ということも今ひとつ不透明な気がします。

      2009年のインフルエンザの死亡率が低かった、
      およびコストのことと言えば
      全世界の75%を消費していると言われる日本。
      注)Surveillance for neuraminidase-inhibitor-resistant influenza viruses in Japan, 1996–2007
      「気軽に使える環境にある」のは、
      やはりラッキーなんでしょうか。
      「日本発の超強力耐性株」なんてのがが未来永劫
      出現しないことを祈るのみです。