近年、「ガンと闘うな」、
というお医者さんの本がよく売れているそうです。
確かに、治療によって治りにくいガンはたくさんあります。
効きもしない薬をひどい副作用を我慢しながら使うことになるのは、
検査をするからだ、と
検査そのものを否定する様な話をする先生もいます。
ある意味では正しく、ある意味では間違いだと思う私です。
確かに胃のバリウムによる集団検診が、生存率を改善しない、
というジレンマのようなデータもあります。
だからって、何でもかんでもひっくるめて
大ざっぱに論議するのには首をかしげます。
というわけで、今日は
大腸線腫を摘みとった場合と
何もしない場合の大腸ガンの死亡率についてのお話しです。
大腸の検査といえば、
便潜血検査といって、
ウンコに血が混じっているかどうかを調べる検査、
注腸といって、
大腸にバリウムという白い液体を入れて、
エックス線写真を撮る検査、
大腸内視鏡といって、
おしりから1-1.5cm位の管を入れて
大腸の内側をのぞく大腸カメラなどがあります。
どれも一長一短なので、
これが絶対お勧め!ということはできません。
ともあれ、今日は私の専門分野でもあった大腸内視鏡、
いわゆる大腸カメラについての報告です。
一般的に、大腸にイボがあるとき、
大腸ガン、大腸線腫、それ以外のもの、と、
大体3種類に分けられます。
このうち、炎症性polypは
大腸そのものが問題なければ通常放っておいて良いもの。
やや大きめの線腫は将来ガンになる可能性を秘めたものです。
特に1cmを超えるとガンが混じっていることが多くなります。
日常診療では、線腫と判断した場合は
内視鏡でチョンと焼き切ってしまうことが多く、
それをポリープ切除術といいます。
これが、本当に将来役に立つかどうか、という調査です。
Polyp切除をした2602人を23年間調査しました。
その間に、1246人が亡くなり、
12例が大腸ガンで亡くなりました。
一般の集団では
23年間に25.4人程度が大腸ガンで死亡すると予測されるので、
polypを切除した人は
大腸ガンで死ぬ確率が53%も減ったのです。
つまり、線腫を切除すると、
大腸ガンで死ぬ確率が半分になる、というわけなのです。
今、日本のガンの死因の
男性で3位、女性で1位の大腸ガン。
やっぱり、大腸カメラは
一度は受けた方が良さそうだと思うのは、
私が長年内視鏡に携わっていたからでしょうか・・・。
ガンって、種類がピンキリです。
発見されてから、
ポツポツと転移するけど、
それでも何十年と比較的普通に生活できる
穏やかなガンもあります。
発見されてあっという間に、
それこそ2-3日で亡くなっちゃうガンもあります。
あれもこれも一緒くたにして
「治らないから放っておけ」
とか、
「発見しても意味がない」
なんて言うのは、
私から見れば、
専門家として常軌を逸しています。
「専門家」なら
ガンの種類を分けて
個別に論じるべきではありませんか?
医療否定論にも正しい部分はありますが、
間違いも多く含まれます。
何でもかんでも鵜呑みにせずに
正しいことを詳しく知っておきたいですね。
「大腸カメラってこわい」と思う方もおられるかもしれません。
検査の方法の詳細は別の機会に話すとして、
この写真は、私の大腸の写真。
私は10分前後で検査が終わってしまいました。
検査をしてくれる先生とおしゃべりしながらずっと画面を見ていましたよ。
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Dr’s Meのコラム
もご覧下さいね。
参考:Zauber AG. N Engl J Med 2012; 366:687-696.